大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和27年(あ)5032号 判決 1953年9月17日

本籍

広島市幟町一五四番地

住居

同市江波沖町 市営住宅ト組の四

無職

前田頴作

大正九年二月八日生

右に対する有価証券虚偽記入、同行使、詐欺被告事件について、昭和二七年八月二九日広島高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意第一点は判例違反を主張するけれども原審の是認した第一審判決は、被告人が行使の目的を以て為替手形用紙の引受欄にほしいままに広島市幟町一六二ノ二合名会社原商店代表社員原信嗣と冒署しその名下に偽造印を押捺し、これを同市上流町河野忍に示し「原が引受をするからこれで一〇万円借りて貰いたい」と申向け、情を知らない同人をして右引受記載のある該為替手形用紙を利用して同人振出名義の金額一〇万円の為替手形一通を作成せしめたとの事実を認定し、以て有価証券虚偽記入罪に問擬したのであつて、この判旨は論旨引用の判例と全く同旨に出でたものである。右の事実によれば唯引受の記載が振出の記載に先立つてなされたというだけで結局正当に振出された為替手形に他人の署名を冒用して虚偽の引受に関する記載をなしたことに帰するのであるから判示は正当である。同第二号は量刑不当の主張であり上告適法の理由にならない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例